
こんにちは、テラドローンHR/PRチームです。
欧州のドローン産業は今、大きな転換点を迎えています。ドローンを飛行させるための法規制は急速に整備されつつある一方で、ドローンと有人機が安全に共存するための空域管理に関する国際的な技術標準は、まだ確立はされていません。この国際的な技術標準づくりの最前線で活躍するのが、テラドローンの子会社である、ベルギーのUTM(運航管理システム)プロバイダーのUnifly NV(以下、ユニフライ)です。
2015年に設立し、ドローンの運航管理システムであるUTMの開発を手がけるユニフライは、欧米8か国のUTM導入実績を有し、同分野における世界的なリーディングカンパニーです。当社グループの一員として、UTMの開発と提供にとどまらず、UTM分野に関する技術標準作りをリードしています。
今回お話を伺ったのは、ユニフライでテクニカルリード兼UTM分野のエキスパートを務めるYouri De Bondt(以下、ユーリ氏)です。創業間もない時期から約10年にわたって会社の成長を支えてきたユーリ氏に、空のインフラをゼロから構築することの意義、UTM分野における国際的な技術標準を構築する重要性、そして「一生に一度の機会」だと語る航空業界変革の可能性について聞きました。
【プロフィール】
1983年生まれ、41歳。ベルギー在住。航空への情熱を持ち、ユーザー画面から裏側のデータ処理まで一貫して担当できるフルスタック開発者として、ユニフライの創業期である2016年に入社。当初はソフトウェア開発者として採用されましたが、現在は欧州のUTM分野における技術標準を構築する主要人物の一人として活躍。EUROCAE、ISO、ASTMなど主要な国際標準化機関でユニフライを代表し、UTM分野に関する技術標準の策定に携わっています。2児の父でもあります。
LinkedIn:linkedin.com/in/youridebondt
航空への想いから始まったUniflyでの挑戦
ーーまず、ソフトウェア開発者からUTM分野のエキスパートになるまでの経緯を教えてください。
私は子供の頃から航空機が大好きで、空を飛ぶものなら何でも興味がありました。2016年に同僚がユニフライのCTOに就任することになり、それが転機でした。ドローンという新しい分野を通じて、念願の航空業界に関われるチャンスだと思ったんです。
何より魅力的だったのは、新しい分野かつ新しい会社で、これまでにないソフトウェアプラットフォームをゼロから作り上げられることでした。まさに理想的な環境で、迷うことなくユニフライへの転職を決めました。
欧州のUTM分野における技術標準の策定に本格的に関わり始めたのは2年ほど前からです。欧州の新しいドローン規制(U-Space)※1では、プラットフォームでの認証が必要となりました。ユニフライのUTMはすでにU-Spaceに準拠した技術を備えていますが、そのために必要な技術標準はまだ完全には整備されていません。UTMが世界的に普及するためには、新旧の異なるシステム同士が連携できる共通の技術の標準化が不可欠です。まさに今、その基盤を作る重要なタイミングです。
※1 欧州のドローンや空飛ぶクルマなど次世代エアモビリティ実装のための規制の枠組みまで含めた運航管理に関する概念
ーー具体的に、どのような活動をされているのですか?
主に欧州のEUROCAE(European Organisation for Civil Aviation Equipment)※2、それからISO(International Standardization Organization)※3、米国のASTM(ASTM International)※4といった国際標準化機関のワーキンググループに参加しています。
活動の中心は、ドローンの運航を管理するUTM同士、あるいはUTMと有人機の航空交通管理システムであるATMとの統合に関する技術標準の策定です。ワーキンググループでは、パートナー企業だけでなく、ANSP(航空管制サービスプロバイダー)など、同じ課題を抱える様々なステークホルダーと議論をしています。
これらの議論を通じて市場のニーズを把握し、それをユニフライの研究開発に活かしています。常に5年、10年先を見据えて動いています。
社内でも毎週、エンジニアメンバーが集まって定例を開催し、私の業務内容を共有して、チームメンバーから意見やフィードバックをもらうようにしています。
※2 欧州民間航空電子装置機構:航空分野において、技術的なコンセプトの調査・提言を行い、技術標準の設定などを支援する欧州の民間非営利団体
※3 国際標準化機構:電気・通信分野を除くさまざまな産業分野で、国際的に通用する基準(ISO規格)を策定し、普及させることを目的とした、スイスに本部を置く非営利団体
※4 米国材料試験協会:材料、製品、システム、安全性、性能に関する技術的基準であるASTM規格を策定・発行する世界最大規模の民間規格制定機関
国際標準化で築くUTMの未来
ーーユニフライのUTMの強みは何ですか?
私たちの強みは、多様かつ変化し続ける規制への対応力です。ユニフライのUTMは、特定のユースケースに限定された設計ではありません。2015年にUTMの世界に参入して以来、欧州の幅広く複雑な規制に対応してきた経験から、私たちは多様なステークホルダーのニーズを深く理解しています。さらに、当初からドローンの自律的な運航を見据えてUTMを設計し、ドローンの社会実装に向けて対応できるよう準備をしてきました。その結果、ユニフライのUTMは欧州に限らず世界中で柔軟に活用することができます。このように、各国の規制に柔軟に対応できることが当社の最大の強みと考えています。
また、これまでの実績を評価いただいているからこそ、ワーキンググループのメンバーは皆当社のことを知っているため、UTMのことならユニフライに相談しよう、という状況になっていることも確かな強みだと思っています。
ーー個人の専門性とチームワークのバランスはどのようにとっていますか?
研究開発は必ずチームで取り組みます。私たちは比較的小規模な会社で多くのプロジェクトを並行して進めているため、私が単独でスタートすることもありますが、本格的な開発段階ではチーム全体で協力します。
UTM分野の技術標準の策定については現在私一人で担当していますが、それでも社内コミュニケーションは欠かせません。私はもともとよく話す性格で、常に自分の活動を社内に共有して、興味を持った人が気軽に参加できる環境を作っています。
これはユニフライの良いところで、誰でも関心があれば会議に参加したり、情報共有を受けたりできます。私だけの専門領域ではなく、みんなで取り組める開かれた組織になっていると思います。

共に挑む、未来の空のインフラづくり
ーーテラドローングループに参画したことで、会社にはどのような変化がありましたか?
日本の事業責任者の植野さんや羽渕さんが経営陣に加わったのは大きな変化でした。ユニフライには、立場に関係なく誰とでも気軽に話せるカルチャーがありますが、お二人とも気さくな方で、積極的なコミュニケーションができています。
テラドローングループに参画してから、事業面でも大きなチャンスが増えたと感じています。例えば、EuroUSC Italiaの買収は、テラドローンなしには実現できなかったでしょう。また、LinkedInでお互いの事業を紹介し合うなど、マーケティング面でも相乗効果を感じています。ユニフライとテラドローンの両方が世界的な認知度を高めているのは確実です。
ーーテラドローングループの今後の成長をどのように見ていますか?
私たちの目標は、単なるドローンの運航管理システムの開発・提供だけではなく、それを超えた、ドローンと有人機が共存する新しい空域管理の確立が必要だと考えています。日本とベルギーの力を合わせれば、世界的なインパクトを生み出せると確信しています。
ーー最後に、当社グループやユニフライに興味を持つ方へのメッセージをお願いします。
私たちの挑戦に共感し、ともに歩んでいただける仲間を心から歓迎します。いま私たちが立っているのは、新しい時代の入り口にすぎません。私たちの取り組みのユニークさと可能性を、多くの方々に感じ取っていただけると信じています。
専門家が増えれば増えるほど、組織が大きくなればなるほど、真の意味で、私たちが目指す空のインフラ構築の実現に近づき、世界に変革をもたらす可能性が高まります。同じ志のある方をお待ちしています。