2024年11月8日

創業者の「熱量」と「気迫」が原動力に。テラドローンの主力事業を第一線で引っ張る2人が語る世界を見据えた挑戦

こんにちは、テラドローン広報チームです。

今回はテラドローンの事業面と技術面の中枢を担う、開発本部の塩澤駿一さんと運航管理事業本部の植野佑紀さんによる対談をお届けします。

当時のテラドローンでは珍しい新卒、第二新卒で入社した2人。社会人経験をこれから積む段階での徳重徹社長との出会いは、その後の2人の働き方における価値観を固める上で大きな影響を与えました。

テラドローン創業初期の浮き沈みが激しい時を経験してきた2人から見て、現在のテラドローンはどのように映っているでしょうか。そして、今後のテラドローンにどのような可能性を感じているのでしょうか。

今回は、現場の第一線で責任者として活躍する2人ならではのトークが繰り広げられていきます。

ーテラドローンと出会ったきっかけを教えてください。

塩澤:インターンを経験して2018年に新卒として入社しました。インターンを通して、本気で世界一を目指していると感じたのと同時に、そんな会社にエンジニアがいないのはもったいないと感じました。インターン業務の中で、当時の主力事業の解析時間を80%削減することができて、この会社に技術が加わればもっと成長を加速できると実感しました。入社した大きな理由は、自分で開発部を作って「世界で戦えるテックベンチャーにしたい」と思ったことにあります。

植野:2016年に新卒で伊藤忠商事に入社した後、働く環境や人には非常に恵まれていたのですが、思うところがあって意識的に社外の方とも話す機会を作っていました。その際、限られた繋がりも活かしながら、とにかくアーリーステージにあるスタートアップを中心に80〜90人ほどに会っていた中、自分が軸としていた「特定の新しい産業・市場で世界一を目指しているか」に当てはまったのがテラドローンでした。

―入社後、どんなキャリアを歩んできましたか?

塩澤:学生時代に研究していたドローンレーザに関する技術を生かしてTerra Lidarを開発したほか、開発組織の拡大、スウェーデンやオランダなどの海外関連会社における技術部門の立て直しを進めてきました。現在は、農業領域でのオペレーションを確立するための体制づくりや、技術的な点からコストを見直し、収益を高める取り組みの他、社内のデータガバナンスを高めるためのフロー設計などを担当しています。

植野:最初は、ドローンの画像処理解析ソフトウェア事業の立ち上げを担当し、提携先である欧州の会社と連携したり、ラスベガスやベルリンなどの展示会に出るために海外に飛ぶこともありました。ゼロからの立ち上げで、ソフトウェア開発、事業モデル構築、代理店開拓、パンフレット作成、展示会設営など、国内でも北から南まで何度も行き来する泥臭い日々でした。

入社から1年ほど経った2018年から、買収したインドの会社に駐在した後、オランダにある別の買収先の会社に移りました。

この頃から「欧州の事業拡大」が自身のミッションになり、欧州にある3社をまとめて事業規模を広げる動きを進めました。この時期にベルギーを拠点とするUTM(ドローンや空飛ぶクルマの運航管理システム)を開発する子会社のUnifly担当となり、2022年から約1年間はベルギーを拠点にオランダと半々の割合で行き来していた状態です。

その後、2024年に日本に戻ってからはUTM事業を統括しています。

―2人は新卒、第二新卒でテラドローンに入っていますが、徳重徹社長との出会いはどうでしたか?

塩澤:所属していた大学の研究室とテラドローンが共同研究をしていたのですが、徳重社長がある時突然、スゴいオーラを放って研究室に入ってきたのが出会いです(笑)「オーラがスゴイな…」と感じつつ、その時は異様な空気感があり直接話ができませんでした。

その後、インターンを機に定例の会議を通じてやり取りするようになりました。ただ、最初の頃と変わらず、相変わらずの気迫に「スゴい人だな」と感じていましたね。

植野:なるべく自分で直接会社に突撃し、出会った人とのコネクションを通じて仕事を決めたいと思っていました。ただ、最後はエージェントを使ってしまうのですが…

そのエージェントの担当者に勧められてテラドローンの面接を進めましたが、徳重社長とは最初、電話でやり取りしました。電話口から「俺、いま空港にいるから」と言ってきたことに驚きましたが、その時のやり取りで「OK」となって入社に至っています。

―実際にやり取りして影響を受けた部分は?

植野:やり取りして最も驚くのは「アクセルとブレーキのバランス」です。むやみにリスクを取るのではなく、かと言って攻めないわけでもない交渉、決断の感覚に驚かされます。経営へのシビアさとともにその交渉力から多くを学んできました。

一方で、日本経済を成長させたいという思いが強すぎて勘違いされることも多いのですが、実際は多様性をかなり重んじていると思います。国籍に関わらず、仕事をこなす人へのリスペクトが強いですし、とにかく「フェアな人」だと感じますね。

塩澤:Terra Lidarの開発をしていた頃には毎朝連絡を取っていて、「無茶な要求をしてくるな…」と思いつつも、「できます!」と返すようなやりとりをしていましたね。ただ、その時にスピード意識を学び、現在の行動にも生かされています。

学生の頃に出会って以来、日本をよりよくしたいという熱量を切らさないところにも驚きます。月日が経つごとその思いが強くなっている点に対し、背中を追わなきゃと感じます。

―2人にとって、初期に経験した経験で現在に影響を与えていることを教えてください。

塩澤:やはりTerra Lidarの開発をした経験ですね。入社して間もない時期は他に開発者がおらず、開発資金も無いリソースが限られた条件の下でアイデアを出すしかない環境でした。開発補助金などを採択いただき、「最小のコストで作るにはどうしたらいいか」とひたすら考えていました。

その時期、外部の製造パートナーにノウハウの面で助けて頂きました。そうした座組でTerra Lidarを作り上げた経験が他の製品にも生かされています。Terra Lidarシリーズの最初の製品を2019年に発売して以来、今でもパートナーの方々のサポートをもらいながら開発を進めています。周りから「応援したい」と思われる魅力を持っておくことが大事との考えは、初期の経験が生かされていますね。

Terra Lidarは会社を支える事業になりましたが、ビジネス面でも「ハードのTerra Lidarを販売し、ドローンレーザ解析のクラウドサービスを提供する」という継続的なモデルができたことも生かされています。解析のクラウドサービスにおいては、当時、他の企業が軒並みソフトでの売り切り型だったこともあって、社内の反対もありましたし、ハード面では国交省が提示する当時の作業基準にない技術を使っていたこともハードルになっていました。

しかし、ドローンレーザは当時高価で限られたお客様しか買うことができなかったですし、ドローンレーザ解析は非常に難易度の高いものなので、当時の価格帯ではかなり安価なTerra Lidarと、解析のクラウドサービスを組み合わせたこのモデルが、お客様にとっても使いやすい最適なプロダクトだという確信があったんです。そこで、周りの企業の方にサポートしてもらい、国交省に対して「技術面で問題ないこと、Terra Lidarが業界の発展につながると思っていること」を理解いただくためのロビー活動も行いました。その経験から、「新産業ではお客様を深く理解することに加えて、ルール側からも働きかけていくことが非常に重要なんだな」ということを学びました。

植野:徳重社長は連続起業家でスーパーマンですが、本人が得意ではないことをちゃんと取締役や執行役員など周りが補完する体制になっています。具体的な例だと、Terra Lidar初期の段階で、パートナーに助けてもらい、ロビー活動でも周囲で助けてもらえた点は、多分塩澤さんにしかできない能力だと思います。他の経営陣もそうした部分を補っているのかなと感じます。私自身も、徳重社長と一緒に仕事をする際には、役割分担や、徳重社長の強みをどう活かして弱みをどう補完するかを考えていました。

塩澤:プロダクトを広げていく上では、入社当時から各業界でドローンをつかって仕事をしているパイロット(操縦者)がいたことも大きかったです。社内でサービス提供のアーリーアダプターのような役割を果たすパイロットの人たちに意見を聞けたことが、業界の課題を引き出すことに生かされています。クラウドサービスについても、お客様がハッピーになるには難しい解析作業はなるべくクラウドにやってもらう方ががいいよねと、現場で感じたことがきっかけになったんです

植野:入社時から「グローバルに戦う」ことを前提に考え、徳重社長は公開情報だけではわからない「一次情報を取る」ことを重視して世界を何周も回っていました。ドローンがどの国のどの産業でどれだけ使われ、市場性がどれだけあるかといった視点で見てきたのは創業期ならではの経験なのかなと思います。 

シリコンバレーや深圳などで数十億、数百億と調達したドローン会社が撤退している中、テラドローンが生き残って成長を続けているのは、市況を把握した前提で取るべき最大のリスクを取ってきたからだと思います。スタートアップって普通は1つのプロダクトに全リソースを割き、Jカーブの成長を描くほうがカッコよく見えるかもしれませんが、テラドローンの強みはドローン産業の中であえてポートフォリオ経営をやっている点にあると思います。中長期で産業にインパクトを与える点ではこれから5年、10年にかけてもビジネスを伸ばせるのではないかと感じています。

―「グローバルに戦う」ことを続ける魅力や、壁に感じることはありますか?

塩澤:ビジネスをきちんとやっていれば日本のビジネスパーソンは優秀なので、言語の違い以外で怯える必要は無いと感じています。同時に日本企業のスピード感の遅さには問題があり、アジアの国々の人といると仕事に対する気合いやモチベーションが全然違います。日本でずっと過ごしていると、ビジネスにおける固定観念が染み付いてしまっている部分があるかもしれません。他の国々の人たちのリスクの取り方はかなり勉強になりますし、自分自身の価値観を大きく変えたと思います。

そうした意味で海外に出て空気感を吸収することも大事だと感じます。「こんなリスクの取り方をするの?」と思いつつ、成長をしている会社の姿を実際に見なければ、自分のスピード感やリスクの取り方が世界レベルでは全然及ばないことに気づけないままでした。

植野:テラドローンがやっていることは難易度が高いものも多いのですが、どの国に行ってもうまくいく会社にはある程度の再現性があると思います。相手も同じ人間だし、海外の方がより実力主義なので結果が出なければ干される反面、実力があればある程度やれる点でいくと、日本人はもう少し海外に踏み込んでいくべきだと思います。

日本だとどうしても国内市場ばかり見てしまいますが、海外は最初からプロダクトを世界に送り出そうという考え方で明らかに広がりがあります。そうした前提条件が違いますよね。

―ここからは組織の話になりますが、2人がいるチームの特徴として挙げられる点はありますか?

塩澤:もともとドローンの測量領域のハードの開発だけをやっている組織からポートフォリオが広がり、現在は測量、点検を含めてハードからソフトまでかなりカバー範囲が広くなっています。その割には組織として小さく、つまりは1人ひとりの能力の高さで成り立っている部分がありますね。

人を大きく増やして進めるやり方でもよかったのかもしれないですが、そうすると1人ひとりの裁量権が減ってしまいます。そういう観点では、強い人材を増やし、その人の能力を最大限に生かして進めるやり方はテラドローン全体の文化といえるかもしれません。

テラドローンの技術的な強みを一言で示すのは難しいですが、制約に縛られず世の中にある技術を引っ張ってきて社会に送りだせる実装力にあると思います。そもそも、先端技術は社会への応用が難しく、細かな部分に気を遣ってカスタマイズしなければならないんですよね。そうしたものを実装する力がテラドローンにはあります。

植野:私が思うテラドローンの開発の強みは、ハードだけ・ソフトだけではなく、サービスも含めたすべてを行き来しながらPDCAを回してソリューションを作り出すところにあると思っています。それぞれ開発において考え方が全く異なるので、これらを両立できているのは珍しいかもしれませんね。

我々が取り組む課題はグローバル共通での大きなものが多く、航空業界においては数十年かがりの時間を要する、大きなイノベーションとなるものです。そうした時間がかかる部分に対して想いを持っている人の存在と、これまで培ってきたドローンに関する知見を掛け合わせることで、大きな変革をもたらせると思います。

ともに業界の課題に挑む人たちの中でも、想いが通じる人たちには「業界にポジティブな変革をもたらそう」「既得権益に頼らず産業を良くしていこう」「テクノロジーで業界を進化させよう」といったテラドローンの理念が伝わるんですよね。優秀で業界に変革を起こそうと考える人が、国籍に関わらずテラドローンにジョインしたくなる流れになってきていると感じています。日本の大企業との間でも、グローバルに展開し、アジャイルな対応力を持つテラドローンの強みがさまざまな協調につながっていると思います。

―3年後、5年後を見据えてこれからどんなことを目指していますか?

塩澤:我々がやっている、ドローンに機能を実装する取り組みはIoTの領域にあります。普通、IoTと言えば動かないものが対象になりますが、ドローンのデバイスは3次元空間を動くので技術的難度は上がりますが、そうした部分を包括的に実現・実装できるところがテラドローンの強みや特徴です。

IoTやセンシングといったキーワードの中で、将来的により多くの人にその価値を共有してほしいと思っています。これまで測量や点検といった分野で業界にインパクトを与えてきましたが、それだけだとドローンは「3次元空間を移動できる物体」でしかありません。

ドローンは、移動の効率化や人の命を救うといった観点からデバイスとしての非常に強力なポテンシャルを持っています。全ての人間の活動を代替する役割を果たすためにも、街中を含めて数多くドローンが飛べる環境を築けるようにしたいですね。

植野:我々はドローンを通じて色んなことができると思っていますが、ドローンや空飛ぶクルマの社会実装にはまだまだ時間がかかります。自動車が社会実装して世の中にインパクトを与えたように、我々は「テラドローンがいることで、ドローンや空飛ぶクルマの社会実装までにかかるリードタイムが短くなった」と言われるようなところを目指しています。

そのためにも、効率性や安全性といった部分を飛躍的に伸ばしてテクノロジーをグローバルに享受できる環境を築いていくことに我々の魅力があると思っています。