
こんにちは。テラドローンHR/PRチームです。
テラドローンでは先日、BIM/CIM配筋モデルと2次元図面の連動を実現した自社開発ソフトの販売を開始しました。
2次元図面の作成と連動して3次元モデルを生成できる今回のソフトは、コンクリート工事における設計、施工における業務効率化に大きく貢献できる可能性を秘めています。
実はこのソフト、長らく土木業界で経験を積んできたテラドローンのあるエンジニアが自身のために制作したソフトが基盤となって製品化に至った経緯があります。「自分のため」に作り上げたソフトが「みんなのため」へと広がったプロセスにはどんな道筋を辿っていったのでしょうか。今回はソフトの開発を担当した宇都本彰夫さんに開発の裏話をお聞きしました。
CIMとの出会いが広げた、キャリアの選択肢
ーーまずは自己紹介をお願いします。
新卒でゼネコンで働き始め、施工管理を3年ほど経験した後、現場の業務を支援する技術部という部署に10年ほどいました。技術部にいた当時、現場を3次元で表現するCIMが広がり始めた時期で、仕事で携わりながら「これは面白いな」と思い、もっとCIMが扱える環境を求めて土木関連の設計会社に転職して2年ほど勤めました。
縁あってテラドローンに入ってから1年ほどが経ちましたが、現在はテラドローンでは、BIM/CIM(現場を3次元モデルで表現し活用する)で業務効率化を図る仕事をメインにやっています。
ーーCIMを扱う経験は社会人になってから身につけたものですか?
最初の会社で技術部にいた時ですね。そもそも、業界内で「3次元で表現したい」といった動向はありましたが、現場を表現する環境が整っていなかった状況でした。CIMについては仕事で携わりながらテクニカルな部分を身につけていった感じです。
現場の課題から生まれたプロダクト開発の裏側
ーーそんな宇都本さんが、テラドローンでどんなプロダクトを開発したのですか?
コンクリートに配置される鉄筋の3次元モデルを作るプロダクトです。3次元モデルを作る際、これまでは2次元の設計図面を見ながらアウトプットしていくやり方が主流でした。それに対し、今回のプロダクトは2次元の図面を起こしていくと3次元モデルが同時に出来上がるのが特徴となっています。
業界内では2次元の図面だと完成イメージが想定しづらいことから、3次元モデルの有用性はある程度浸透しています。ただ、これまで実際に3次元モデルを作ることは手間がかかって大変なため、これまで通り2次元のみで管理したほうが結果的に効率的になってしまう状況が現場でずっと続いてきました。今回のプロダクトは、そんな業界内の悩みに対して3次元モデルを簡単に作れる仕組みを作ることで有用性を享受できます。
ーーそもそも宇都本さんはなぜこのソフトを開発することができたかを教えてください。
土木設計やプログラミングの知識は、プロダクトの開発に不可欠です。どちらか一方の分野において、自分よりも知識や経験が豊富な方は業界内にたくさんいます。ただ、土木設計の知識、経験を持ちながらプログラミングができる技術者となると業界内には限られてきます。そこが、製品化まで至った部分なのかもしれません。特にプログラミングについては、すき間の時間を見つけてテクニックを身につけていった感じです。
土木業界全体の課題として、新たなものを導入することに対する抵抗感があると感じることがあります。ただ、このプロダクトはCADソフトを扱いながら動かせるので、新たなものを導入するというより現在使っているものの延長線上にある部分が強みの1つです。
ーー実際に設計の現場について宇都本さんはどのように捉えていますか?
土木の現場はもともとの設計図面に対し、現場で施工を進めている時に変更しなければならない部分が発覚することはよくあります。そうした状況になった時に2次元の図面を書き直すのですが、別途3次元モデルを作り直すのは手間がかかるのでそのままにしてしまうこともあります。本来であれば、3次元モデルも正確に更新するのが望ましいのですが、これまでの慣習と作業が楽であることから2次元の図面を中心に現場が動いています。
図面を作る際、必要な座標情報を計算できればできるのでそこまで複雑な知識は問われません。ただ、土木関連でプログラミングをやっている人もほとんど2次元での対応しかできない人がほとんどです。編集時に2次元図面と3次元モデルが同時に生成される点がプロダクトとしての強みになっています。
ーー開発においてはどんなプロセスを踏んでいきましたか?
プロダクトがある程度完成したら、まずはニーズ調査を実施しました。営業の現場でヒアリングをした結果、需要があることがわかり、その流れで商品化を進めていきました。社内の事業にするためにはハードルはありましたが、同時並行で発表した株式会社大林組、株式会社建設技術研究所、八千代エンジニヤリング株式会社との共同開発も動き出したので、事業としてスタートすることができました。
市場でのニーズを掴む方法も少し特殊で、私がもともと土木の業界に長くいた分、「自分が困っていることは皆も困っていることだろう」とユーザー視点で判断しながら仕様を決めることができたので、課題探しに対するコストを低く抑えられたと思っています。
ーー開発時に技術面で直面した壁はありましたか?
考えるとたくさんありますね。もともと自分用にカスタマイズしていたため、ある程度ユーザー目線は持っていたつもりでしたが、実際のユーザーが感じる“使いにくさ”まではなかなか見えづらい部分もありました。周りの方にモニタリングをお願いした際も、「これはできないの?」「こうしたらいいんじゃない?」とたくさんアイデアをいただき、何度も改良を重ねながら進めていきました。様々な意見を取り入れて課題を解消したうえでリリースできたことは結果的にはよかったです。
現場目線の仲間と、“使える技術”を広げたい
ーー宇都本さんから見て、土木の世界が今後どのように進化、変化していくと思いますか?
「新しいことをやっていかなければならない」とみんな思っているけど、「従来通りにやった方が楽」との考えがどうしてもあるのが土木の業界における現在の状況です。ただ、その状況だとよくないと気づき始めている段階にもあり、これから徐々に変化は進んでいくと思っています。
そのために、これからもっとユーザーフレンドリーにしていかないといけません。今回のプロダクトもユーザーからのニーズを引き出しながらさらに改善を図りながら進めていきます。
ーーその上でこれからどんな人と一緒に働きたいですか?
土木業界を改革していきたい”という意志を持った方と、一緒に働きたいです。今回共同開発した他社のメンバーを含め、この業界にはそうした熱い思いを持った人がたくさんいると思います。これまで自分が大変だと思っていた部分を今回のプロダクトを通して少しずつ変えることができていると実感しています。今後も、多角的に図面を捉えられる人と一緒になって仕事をしていきたいですね。テラドローンではこの1年、成果を出す必要はありましたが、縛られずに自由に挑戦できる環境がありました。共同開発の中でアドバイスをもらえる環境があったことも、大きな魅力の一つでした。これから今回のプロダクトを通じて、どのような実績を積み上げていけるのか、とても楽しみです。