2025年8月8日

Unifly Co-Founder / Director Sales & Innovation Jürgen Verstaen インタビュー Terra Drone Groupが描くエアモビリティの未来

こんにちは、テラドローンHR/PRチームです。

テラドローンは、無人航空機(UAV)の未来を単なるドローンの運用に限定せず、より広い視野で可能性を追求しています。戦略的なパートナーシップやグループ内連携を通じて、ドローン技術と空域管理のあらゆる段階をカバーするエコシステムを構築中です。

その中でも、ベルギーに拠点を置くUniflyは、運航管理システム(UTM)分野で世界をリードする存在として、グループの欧州展開における中核を担っています。異なる文化や市場環境のもとで、どのように事業を成長させてきたのか。その歩みには、グループ全体が将来の方向性を考えるうえで、多くの示唆が含まれています。

今回はUnifly 共同創業者であり、元軍用航空管制官のJürgen Verstaenに、スタートアップ期から当社グループへの参画、急速に変化するドローン業界における技術革新の重要性、そして次世代の空のインフラについて伺いました。

【プロフィール】
ベルギー空軍で16年間にわたり軍用航空管制官を務めた後、2015年にUniflyを共同創業。航空安全と交通調整の深い専門知識を活かし、UTM技術の基盤を築き上げました。現在は、Uniflyのイノベーション責任者として政府支援の研究開発プロジェクトを主導し、ドローン向け航空交通制御の限界に挑み続けています。
LinkedIn:linkedin.com/in/jürgen-verstaen-14625721

ーーご経歴とUnifly創業の経緯について教えてください。

私は、ベルギー空軍で16年間勤務し、その経験を通じて、Uniflyの現CEOであるAndresと共に、UTMの概念を構想し、Uniflyを創業しました。

2015年8月に会社を設立し、軍を退役した2016年3月から本格的にUniflyに専念しました。当初はグローバルビジネスの開発を担当し、多くの国を飛び回っていました。その後は社内のイノベーションにフォーカスし、現在は営利目的のプロジェクトではなく、外部資金による研究開発プロジェクト全般を統括しています。


ーーUniflyではイノベーションが事業成長に繋がっているようですが、なぜそれほど重要なのでしょうか?

イノベーションは選択肢ではなく、「不可欠」なものです。大企業のように10年単位の開発サイクルでは、急速に進化する市場に対応できません。特に私たちの航空業界の分野では、通常10〜15年の技術開発サイクルが一般的です。

しかし、ドローンの用途は点検や物流など急激に広がっており、迅速な対応が求められています。私たちは商業プロジェクトと公的資金によるR&Dの両方に取り組んでおり、私は主に外部資金を獲得する役割を担っています。


ーー事業開発責任者としての具体的な業務内容について教えてください。

インドネシアでUTMの導入からオペレーションに関わる一連の展開を進めていったプロジェクトを例に挙げてご説明します。現地ではそうした取り組みが初めてだったのでゼロから始めました。UTMを使って実証実験まで進めることが補助事業のゴールとなっていたので、インドネシアの政府関係者や事業者を巻き込みながら進めました。そもそも現地の認識は「UTMとは何か?」という状態だったので、最初は現地の人たちに基礎の部分を伝えることから始めました。

私はプロジェクトマネージャーではありませんが、複数のイノベーションプロジェクトを統括しています。日々の実務はプロジェクトマネージャーたちが担当し、私はUniflyの製品戦略や事業方針に沿った、研究開発の機会を見つける役割を担っています。

製品チームや営業チームと密に連携し、会社の進むべき方向を把握した上で、適切な支援プログラムを見つけ、活用します。多くのR&Dプロジェクトでは、他社と共同数十社規模の複数企業と連携してプロジェクトを実施する必要があります。特にEUの「Horizon Europe※1」など、ヨーロッパには優れた枠組みが整備されています。

現在私が統括するプロジェクトは7件で、通常2〜3年の期間です。また、欧州宇宙機関(ESA)と連携したサイバーセキュリティ分野のプロジェクトにも取り組んでおり、外部からの脅威に対するソフトウェアのセキュリティ強化を目指しています。

※1 欧州連合(EU)が2021年から2027年まで実施する研究・イノベーション支援プログラム


ーーUniflyの技術について教えてください。

私たちが開発しているのは、航空機向けではなく、ドローン向けに最適化された運航管理システムです。現在の使命は、有人航空と無人航空をひとつの統合システムとしてつなぎ合わせること。それこそが、私たちが目指す未来の姿です。

私たちのビジョンは、SF映画のような未来にあります。空飛ぶクルマやエアタクシー、自動配送といった新たな空のモビリティが当たり前に行き交う社会において、Uniflyのシステムはそれらを安全かつ効率的に支えるインフラとして機能します。

ーーUniflyの職場の雰囲気やカルチャーについて教えてください。

最大の魅力の一つは、多国籍で多様性に富んだ職場環境です。現在、5〜6か国からのチームメンバーが在籍しており、共通言語として英語を使用しています。文化的背景の違いから新たな視点を得られ、学び合いながら働ける環境です。

組織構造はフラットで協調的。厳格な上下関係はなく、スタッフと経営陣(例えばCCO)との会話もとてもカジュアルでオープンです。

毎日正午には、社内のキッチンに皆が集まってランチを共にし、コミュニケーションの時間を楽しんでいます。午後には卓球をしたり、軽く散歩をしたりと、リフレッシュできる時間もあり、バランスの取れた職場環境が整っています。


ーー当社グループに加わったことで、Uniflyにはどのような変化がありましたか?

 テラドローンの戦略は非常に合理的で、エコシステム全体を構築するアプローチを採用しています。私はこの構造を「ケーキ」に例えることがあります。ケーキを完成させるには、すべての層が必要です。同じように、テラドローンも各領域を丁寧に積み上げ、全体として価値ある仕組みを形にしています。

彼らはドローン運用、フリートマネジメント、そして私たちUniflyが担当するUTMといった主要な領域をすべて網羅しています。たとえば昨年、Aloftへの投資は、我々との連携においても非常に意義のある動きでした。

今後は、グループ内の企業同士がより密接に連携し、お互いの強みを最大限に活かす協働体制が求められるでしょう。このアプローチは、持続可能かつスケーラブルなモデルだと確信しています。


ーー当社グループの今後の成長についてどのようにお考えですか?

当初、テラドローンは株主ではありましたが、日常業務にはほとんど関与していませんでした。しかし2代目のCEOが退任した後、日本側のリーダーシップが本格的に関与するようになり、日本の事業責任者の植野さんや羽渕さんが現場で共に働くようになりました。

当初は文化的な違いから、多少の衝突もありました。日本のアプローチはコスト効率重視で、非常に分析的な視点でした。ただ、植野さんや羽渕さんとの率直な話し合いをきっかけに、互いの理解が深まり、コミュニケーションが格段にスムーズになりました。

その後、彼らはチームに完全に溶け込み、現在ではお互いの立場や考え方を尊重し合う関係です。Terra Droneグループの支援によって、Uniflyのような規模でも、グローバルに競争力を発揮できるようになりました。


ーー当社グループに加わったことで、Uniflyにはどのような変化がありましたか?

 私からのアドバイスはシンプルです。「今こそチャンスを掴むとき」です。私は歴史が大好きなのですが、まさに今、航空の歴史が新たな章に入ろうとしています。

空飛ぶクルマ、ドローンによる物流、UTM。これらは未来の「当たり前」になるものであり、私たちはその基盤を築いています。100年後には「すべてはここから始まった」と言われる日が来るはずです。

だからこそ、開発者たちにも、自らのコードが実際の現場で活用されている場面を体験してもらっています。自分の仕事の成果を体感できる。それはただコードを書くのではなく、未来を創ることに他なりません。ぜひ皆さんも一緒に未来を創りませんか。